どんな要求にも
こたえてくれる懐の広さ

中高生のころから、他人の価値観に惑わされず、“自分”をしっかり持たなければいけない、と強く意識していました。それで大学では、未解明のことが多く残っていて、国内で研究している人が少なかったマヤ文明について学ぼうと考え、海外の考古学まで幅広く研究を行っている慶應義塾大学の民族学考古学専攻を志望しました。

当時、日本で中南米の考古学を専門に研究するのは珍しく、慶應義塾にも専門の先生はいなかったのですが、自由な校風と聞いていたので、私の希望も聞いてくれるかな、と思ったのがきっかけです。その期待通り、学生のどのような要求にもこたえてくれる懐の広さと、豊富な知識を持ち合わせた先生方のもとで自由に研究させてもらいました。フィールドワークにも参加できますし、考古学と民族学を一体化して学べるという意味でも、他にはない学部だと思います。

社会に出てから必ず
役に立つ力

大学院での1年間と卒業後の1年間、メキシコに留学。その後も青年海外協力隊でホンジュラスに行き、30歳まで自由に研究を続けましたが、いまは外務省で働いています。2014年から2016年までは再びホンジュラスに赴任し、ODA(政府開発援助)に関する業務や文化遺産保護への協力なども担当してきました。

世界を舞台に、異文化の人たちといかに交渉していくか、という意味では、学生時代に学んだ異なる価値観や認識の理解、というものがとても役に立っています。文学部は物の考え方を鍛えてくれるところ。文学部で学んだおかげで、より客観的で、俯瞰的な視野を持つことができましたが、それはどんな国の、どんな仕事でも活用できる能力です。

慶應義塾大学文学部は、専攻以外にもさまざまな学問を勉強することができます。哲学や社会学、考古学などはすべて学生時代にしか学べない貴重な学問であり、人としての基礎を作ってくれるもの。最近は、社会に出てすぐに役立つ実務的な学問が好まれる傾向にあるようですが、私の経験上、決してそうではなくて、文学部で学ぶことの方がよほど社会に出てからの汎用性が高いと思います。外務省では文学部の出身者は少ないですが、私は考古学という接点で世界とつながり、自分の特性を生かした仕事ができています。文学部で学んだことは、どんな社会とも接点を見つけられる、という意味でも価値のあることです。

多様な価値観を認め合う
文化が自分を育ててくれた

ホンジュラス農村地帯の小学生達と

大学を出て就職した時点で、その後の人生がすべて決まるようなことはありません。私自身、文学部で基礎学問をしっかり身に付けたからこそ、いきなり就職ではなく、夢に向かって自分を試していく自信を持つことができました。それはまさに、慶應義塾大学文学部で学んだおかげ。文学部には好奇心の強い学生たちがたくさん集まってきていて、先生たちとも多様な価値観を認め合う文化がありました。もがきながらでも、あきらめずに続けていれば必ず夢はかなうことを若い人たちに伝えていきたいです。