「生きるとは何か」を
捉えたくて人間科学専攻へ

慶應義塾大学文学部の人間科学専攻で学び、魅力的な先生方との出会いがあったおかげで、今の仕事に就いたと言っても過言ではありません。

1年生のときに広く学ぶ中で専攻をどうするか考えましたが、私の場合は「生きるとは何か」を広い視点で捉えたいと思ったので、心理学出身の先生や医療人類学を専門とする先生が在籍する人間科学専攻に決めました。

学びを進めていくと、フィールドワークやインタビューなど、現場で直接、話を聞いて、さまざまな社会問題を解き明かしていく、というスタイルが、自分の嗜好に合っていると思いました。

震災の特集で
大学での学びが形に

終末期医療に興味があったので、医療人類学専門の先生のもと、卒論の研究ではがん患者の方々にたくさん話を伺いました。自分がやりたくて始めた研究でしたが、センシティブなテーマですし、実際にインタビューのアポイントメントを取るとなると腰が重くて…。そのとき先生から「一番やりたい研究は時間がかかる」と声をかけてもらい、先生にも同じような体験があるとお聞きしたことで気持ちがふっと楽になったのを覚えています。

先生からは、どうすればそこに根付く文化や思想を読み解いていけるのか、人の心に迫れるのか、といったインタビューの仕方や、フィールドワークに臨む姿勢など、今の仕事に直結する基礎を叩き込んでもらいました。人間科学専攻での学びは、まさに私の原点で、仕事でも役に立っています。

NHKに就職して7年間を東北地方の放送局で記者として過ごしました。仙台放送局にいるときに東日本大震災を経験し、震災後の混乱の中、宮城県内で犠牲者の火葬が間に合わず、一時的に土葬を行う「仮埋葬」が行われていたことを知りました。知られざる震災の姿として丹念に取材をし、全国ニュースで震災後3年目の特集として取り上げましたが、これはまさに大学時代、先生のもとで人の生と死に向き合う研究をしていたことが一つの形になったもの。大規模災害が起きた直後に直面する埋葬の在り方についても、問題を提唱できたかと思います。

自分の琴線に触れることを
見つけてほしい

慶應義塾に入って良かったと思うのは、国内外からさまざまな人材が集まっていること。それぞれに志が高く、“芯”をしっかり持っている仲間たちと、互いに切磋琢磨しながらも多様性を認め合う雰囲気があったので、一気に世界が広がりました。卒業後もそれぞれ、色々な業界で活躍している仲間たちに恵まれ、本当に良かったと思います。

私の場合は仕事に直結しましたが、たとえそうでなくても、慶應義塾大学文学部での学びは自分の血となり、肉となって、生涯、自分を支えてくれるものです。入学する前から何を大学で研究したいのか決めておく必要は全くないので、大学生活の中で自分の琴線に触れることは何か、ぜひ見つけてもらいたいですし、見つけられたら一生懸命、研究に取り組んでもらいたいと思います。自分自身と向き合わなければいけないときも必ず出てくるでしょうが、その先にきっと、将来の支えになるものを手に入れられるはずです。