先進国の先端をいく「超高齢社会」であり、近い将来認知症800万人時代が訪れるといわれている日本では、現在認知症の早期発見の動きが活発化している。このような変化が医療の充実と、認知症を経験する方やその家族の救済につながる一方で、「自然な老い」が病理化され、早期発見が早期絶望をうみだしてしまうことへの懸念も絶えない。本シンポジウムでは、医療人類学の世界的権威であられるマーガレット・ロック先生をお迎えし、認知症の早期発見をめぐる課題と展望について議論いただき、日本の医療人類学/文化精神医学で先駆的ご研究をなさっている宮地先生にコメントをいただく。
さらに、グローバルな認知症疫学を先導してきた「久山研究」を代表して小原先生に、老い・鬱・認知症の境界線について精神病理学の権威であられる加藤先生、軽度認知障害として正常と病理の狭間で葛藤する人々の心理的ケアについて橋本先生、また認知症の精神療法の可能性について本研究の共同研究者である繁田先生にお話いただき、認知症早期発見時代のネオ・ジェロントロジ―の方向性についてディスカッションしたい。