遺伝と環境は、人間にどう影響しているのか、科学的な解明を目指して20年以上研究しています。そのための研究手法が、双生児法です。長く大人のふたごも研究してきましたが、2004年12月に「首都圏ふたごプロジェクト」を立ち上げ、千組を超えるふたごの赤ちゃんを対象に遺伝と環境の影響を調べています。

一卵性双生児は遺伝的には同じで、育った環境も同じです。二卵性双生児は育った環境は同じですが、遺伝的には半分だけ同じです。それぞれ定期的に知能や言語能力、パーソナリティなどの調査を行い、データを比較します。一卵性と二卵性で結果が似ていれば遺伝的要因が強いと言え、差が出れば環境要因が強いと言えます。

この調査で、いろいろ面白いことがわかりました。たとえば、同じ遺伝的素養があっても、環境によって出る場合と出ない場合があります。問題行動の遺伝的素養は、しつけが厳しすぎたり一貫していない家庭のほうが強く出る傾向があり、しつけがきちんとしている家庭では遺伝的素養を持っていてもそれが表れにくいのです。また、読み聞かせをした子の問題解決力が高くなったり、無理に何かをさせず自由にさせていた子のほうが、知的能力が高くなるという結果も出ています。

調査の結果、予想通りのことももちろん多いのですが、これまで主張されてきたことを、データで裏付けることができました。興味深いのは、遺伝と環境の影響は状況によってダイナミックに変化すること。体重を追跡調査すると、生まれたばかりの頃は子宮環境の影響を圧倒的に受けていますが、成長につれ遺伝の影響のほうが強く現れます。知的能力やパーソナリティも同様に、遺伝と環境の影響がダイナミックに変わるのです。

遺伝も環境もどちらも大事

よく遺伝と環境はどっちが大事ですかと質問されます。でも、どちらも大事なもので、切り離して考えられません。遺伝と環境は複雑に絡み合って、重要な役割を果たしているのです。生命現象はもともと複雑なものです。それを単純な理論に落とし込むのでなく、複雑なまま理解することも大切です。

「首都圏ふたごプロジェクト」の膨大な調査結果は貴重なデータベースとなり、未来のさまざまな研究に役立ちます。将来は、教育実践や教育政策に結びつける研究にも取り組みたいと考えています。

「首都圏ふたごプロジェクト」は
科学研究費補助金を得て継続中。