第1章  地域の概要
 南九州の宮崎県には、 神霊に舞を奉納する多くの神楽が伝承されている。 五ケ瀬川上流の高千穂神楽、 耳川上流の椎葉神楽、 一ツ瀬川の上流の米良(めら)神楽、 霧島山麓の神舞などがある。 銀鏡(しろみ)神楽は米良神楽の一つである。 銀鏡は一ツ瀬川の支流の銀鏡川と登内川の合流点に位置する集落で、 毎年、 12月12日から16日にかけて銀鏡神社では大祭が行なわれ、 神楽三十三番が舞われる。 米良神楽の特徴は、 在地の神が「降居」(御降、 おりい)と称して、 祭りの庭に降臨することにある。 神職は自己の所属する神社の祭神の降居に際して、 面を被って舞う。
 米良山は一ツ瀬川の上流域に位置し、 かつては肥後や人吉との交流が盛んであり、 生活も焼畑や狩猟、 僅かな水田耕作を主として暮らしていたが(野本寛一『焼畑民俗文化論』雄山閣出版、 1984。 東米良郷土史編さん委員会『郷土史−東米良』1989)、 現在では水田や林業、 椎茸や柚子の栽培を行ない、 西都市で勤めている者も多い。 米良は明治22年(1881)に西米良村と東米良村に編成され、 後者は昭和37年(1962)に宮崎県西都市に合併した。 銀鏡は後者に属している。 現在の米良には以下の神社に神楽が伝承されている)(図1)。
西米良 (*は村所の神楽の奉仕  他は銀鏡から伝授)
狭上稲荷神社 大字村所字狭上 12月 5日(毎年*)
本山矢村神社 大字上米良字囲 12月10日(2〜3年ごと*)
横野産土神社 大字横野 12月12日(2〜3年ごと*)
八幡神社 大字村所字鶴 12月18日(毎年)
山之神神社 大字板谷字上板谷 12月20日(2〜3年ごと*)
天満天神神社 大字竹原字春平 12月25日(2〜3年ごと*)
米良神社 大字小川 12月15日(毎年)
児原稲荷神社 大字越野尾 12月 8日(毎年)
東米良 (銀鏡から各地に伝授)
銀鏡神社 大字銀鏡 12月15日
八重稲荷神社 大字八重 11月28日
尾八重神社 大字尾八重