7.踊るカミたち（図録）

テイヤム：色彩と跳躍の女神たち　

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7.踊るカミたち（図録）

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トータム

12月27日、テイヤムの冒頭。静かにおごそかにカミを勧請する。鼓はチェンダ。この衣装はかつてサンガムにいわれた｢背に布を垂らし､頭には大きな飾りを着ける｣姿を想起させる（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 、 VTR4 ）。

12月29日、ナランビル・バガヴァティ（VTR5 、 VTR6 、 VTR7 、 VTR8 、 VTR9、VTR10 ）女神のためのトータムの開始（VTR11 、 VTR12 ）。

コマーラム　

12月27日、カミをよびおろしにかかる。三人のコマーラムは特に担うカミがきまっている。左からそれぞれプランダット・バ　ガヴァティ、カンナンガット・バガヴァティ、プディヤ・バガヴァティのカミを担う。右手にヴァル、左手にスラムと左手の甲にパラジャを携える（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 、 VTR4 、 VTR5 、 VTR6 ）。

12月28日、デイバムの出現する前（VTR7 、 VTR8 、 VTR9 、 VTR10 、 VTR11 、 VTR12 ）。

12月29日、再びデイバムの出現する前（VTR13 ）。

カミを迎えるヴァンナン

12月27日、29日、コマーラムを通してカミを身に担う。カミがはいってくると体が波を打つ。その表情は憑依に近い（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 、 VTR4 、 VTR5 、 VTR6 ）。

供物献上　

12月27日、コマーラムとヴァンナンのおどりのあとで。この方向には天然痘のカミ、プディヤ・バガヴァティ（ VTR1 、 VTR2 、 VTR3 ）女神の石の祭壇がある。

12月30日、主神カンナンガット・バガヴァティ出現の前に犠牲を捧げる（VTR4 ）。

ヴィシュヌムルティをまつる

半ば獅子､半ば人間という男神。剣で象徴されている（ VTR1 ）。

チャムンディをまつる

ヴィシュヌムルティとチャムンディは中心になる祠の右背後の小祠にまつられている。チャムンディにはラクタ､マダイール､タンドルの三種類がある。この武器はヴァル（Vall）という。

デイバム　

12月28日、今回のまつりで最初に現れたテイヤム。男神プリエール・カンナンの化身（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 、 VTR4 、 VTR5 、 VTR6 ）。

ふたたび現れたデイバム。歩いては立ち止まり、回転しては祝福に回る（ VTR7、VTR8、 fVTR9、VTR10、VTR11）。

ドサ回りの芝居　

12月29日、寺院の外で、小屋がけした芝居一座。歌劇風のドラマで人気を博していた（VTR1 、 VTR2 ）。

ベーラッタム

シバ神の化身、プリエール・カンナンをよぶ。激しいカミの息吹が伝わる。促され、跳びまわり。目を見開いた横顔はみる者を完全にひきつける。12月29日と12月30日に同じ担いた手により二度おこなわれた（ VTR1 、 VTR2 、 VTR3 、 VTR4 、 VTR5 、 VTR6 、 VTR7 、 VTR8 ）。

ヴィシュヌムルティのトータム　

12月30日の夜明け前、左手に弓矢を携えて踊る（VTR1 ）。

プリエール・カンナン　

12月29日、午前3時前、同一のカミといわれるので、当然のことながらデイバムと似たいでたちで現れる（VTR1 ）。

12月29日にかけて、薪に火がつけられると同時に現れる（VTR2 、 VTR3 、 VTR4 、 VTR5 ）。

ナランビル・バガヴァティ　

12月29日、大きな首飾り、真っ赤な色の豊満な胸、頭上と腹から突き出た火、手にした武器、射抜くような目つき。ひときわ華やかなカミである（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 、 VTR4 、 VTR5 、 VTR6 ）。

近くの村から祝福の一行　

12月29日、カンナンガット・バガヴァティに音楽と供物をささげる。この一行はパンジャワッジャムとよばれる（ VTR1 、 VTR2 、 VTR3 ）。

ナランビル・バガヴァティとクンドル・チャムンディ　

12月30日、ナランビル女神が火を一杯身につけて走り出てきて、ｸﾝドル・チャムンディ女神と交歓の踊りをはじめる（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 ）。

クンドル・チャムンディ　

12月30日、銀色の豊かな胸が目に付く。カーリ女神の化身ともいわれる。これだけはヴェランのカーストが担う（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 ）。

火渡り　

12月30日に二度おこなわれる。カミ出現のための浄。はじめのはプディヤ・バガヴァテイ出現の直前（VTR1 、 VTR2 ）。

二度目の火渡り。これはカンナンガット・バガヴァティ出現である（VTR3 、 VTR4 、 VTR5 、 VTR6 、 VTR7 ）。

天然痘のカミ、プディヤ・バガヴァテイ　

12月30日、火渡りの直後に現れる。自らも火を身につけ、近づくだに熱い（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 ）。

ヴィシュヌムルティ　　

12月30日、半ば獅子、半ば人間というカミが弓矢を携えて現れる。

プランダット・バガヴァティ

12月30日、このカミはナイール・カーストの守護神（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 、 VTR4 ）。

カンナンガット・バガヴァティ

12月30日、カンダンガリ村の主神は夜が明けてからおもむろに現れる。踊り、巡り、井戸で水を飲む。そして何時間にもわたってムラの人々を祝福。この女神はあちこちのムラでまつられている（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 、 VTR4 、 VTR5 、 VTR6 、 VTR7 ）。

寺の建物マダプラ

　その正面上部に彫られたカミの像｡最上部の舌を出した像は災いを防ぐキムプルシャン。　その下には左から、デイバム、プランダット・バガヴァティ、カンナンガット・バガヴ　ァティ、プディヤ・バガヴァティが描かれている（VTR1 、 VTR2 、 VTR3 ）。

ペル・ヴァンナン

テイヤムを演じるすぐれたリーダー。

ヴィシュヌムルティに変身、そして祝福ともて　なしを受ける。かれは今年57歳。1996年3月24日、近くのムラの鍛冶屋の一族が５年ごと　におこなう繁栄祈願の祭儀に招かれてカミとなった。当核のイエだけでなく、近隣のイエも祝福に回る。

8.ペル・ヴァンナンとの対話

1996年3月、5年ぶりにカンダンガリを訪れ、テイヤムの担い手たちのリーダー、ペル・ヴァンナンに会い、話をきくことができた。以前の聞書とあわせてテイヤムを理解する上で貴重な証言を得ることができた。
ペル・ヴァンナンは1939年生まれで、今年57歳、以前のテイヤムのときは52歳であった。周囲の人にそれとなくきくと、かれはこの近辺ではかなり名の知られた人である。カンダンガリ村のテイヤムのときにはいくつかの家族が集まりチームをなして参与していた。ムラを単位としてやるときもあるし、個人のイエによばれていき、テイヤムをやることもある。
カンダンガリ村の寺の名はカンナンガット・バガヴァティ寺という。この寺は社会的には中間層であるナイール・カーストの寺である。ここでは以下の九つのカミをまつっている。すなわち、: 　; 1. カンナンガット・バガヴァティ; 2.プランダット・バガヴァティ; 3.プリエール・カンナン; 4.ナランビル・バガヴァティ; 5.プディヤ・バガヴァティ; 6.ヴィシュヌ・ムルティ; 7.ラクタ・チャムンディ; 8.マダイール・チャムンディ; 9.クンドル・チャムンディ; 　
これらのうち、3と6が男神、その他は女神。5は天然痘のカミである。そして、別のカーストである3人のコマーラムはそれぞれ1、2、3のカミを代表している。このうち2は4ともどもナイール・カーストの守護神なので重要である。
ベーラッタムという独特の神よばいはプリエール・カンナンのときだけ用いる。このカミはシバ神の化身でもある。
ヴァンナンの階層は労働者や農民が多い。ペル・ヴァンナンのイエもようやく一家が住めるほどの質素なものであった。日常はそう楽ではなさそうにみえたが、外国人のわれわれを迎える物腰はにこやかなうちにもゆったりとし、風格のようなものがあった。
この翌日にちょうど、近くのムラのナイールのイエでテイヤムの儀式があるとのことで、参加してみた。日差しはかなり強く、30度は越えていただろう。日中の儀礼でもあり、なかなかたいへんな祭儀だと感じたが、かれはヴィシュヌムルティに変身すると、5年前と同じように華やかに力強く踊り、カミに特有の裏声でイエの人びとを祝福して回った。

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参考文献　

K. K. N. Kurup、Teyyam、director of public relations govt. of Kerala、1986。
K. K. N. Kurup、THE CULT OF TYYAM AND HERO WORSHIP IN KERALA、Indian ：Publications、1973。
河野亮仙、『カタカリ万華鏡』、平河出版社、1988年。

テイヤム：色彩と跳躍の女神たち