物乞い、女吊、無常鬼−目連戯にみる雑劇の名残
野村伸一
2007年11月27日福建省仙游県楓亭鎮斗北村大浦の目連戯より
乞食の門付け |
劉賈を打ちのめす白無常 |
映像 (4分22秒)
殺生開葷より 乞食の門付け歌。銀奴の自殺。
鬼打劉賈より 白無常の打擲。
(野村伸一編著『東アジアの祭祀伝承と女性救済』、風響社、2007年、207-208頁参照)
*この目連戯の全貌は 福建楓亭目連戯映像一篇 全53分にて掲載。
雑劇について
雑劇の雑とは「形がきまっていないで、雑多」だという意味。雑劇は「本来の滑稽諷刺の対話のほか、歌も舞も加わった複雑なもの」であった。雑劇は「参軍戯の系統」のもので、対話劇からはじまった。…雑劇は宮中から民間に広がった。都市で劇場が設けられると、そこでも上演された。南宋では「諸芸の筆頭の地位」にのぼった*1。
*1浜一衛『日本芸能の源流 散楽考』、角川書店、1968年、183頁以下参照。
乞食の歌と竹の楽器について
映像のなかに乞食の門付けの歌がみられる。これは宋代の雑劇に用いられたささらに溯るとみられる。ちなみに、中国の乞食の歌「蓮花落(リエンファラオ)」では竹板(ジュバン)を用いる。この蓮花落は宋代にすでにあったことが知られている。そして、その竹板から出た四ツ竹は江戸時代に長崎に伝来した。当時流行の小唄にあわせて用いられた。さらにのちには歌比丘尼や非人の用いるところとなった*2。また四ツ竹は琉球舞踊でもみられる。
*2同上、197頁参照。
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