慶應義塾大学文学部民族学考古学専攻・山口徹研究会にようこそ。
南太平洋オセアニアや日本の八重山諸島をフィールドに,考古学と地球科学が協働するジオアーケオロジーの手法を用いて,島嶼世界の景観史のなかに人と自然の絡み合い(entanglement)を読み解く歴史生態学的研究を進めてきました。近年は、18世紀中頃−20世紀初頭の植民地期に収集されたオセアニア造形物に、多様な由来と目論見を持った人々の出会い(encounter)・絡み合い(entanglement)・せめぎ合い(contestation)を読み解く歴史人類学的・博物館人類学的研究にも挑戦しています。
科研費2017年度基盤研究(A)(海外学術調査)に採択されて「オセアニア環礁社会を支えるタロイモ栽培の天水田景観と気象災害のジオアーケオロジー」プロジェクトを開始し、22年前に調査したプカプカ環礁(北部クック諸島)を再訪しました。
プカプカ環礁は2005年2月にサイクロン・パーシーに直撃され、甚大な被害が生じました。カテゴリー4〜5に達したスーパー台風です。それから12年の歳月が過ぎ、島の暮らしはだいぶ元に戻ってきています。出迎えてくれた島民の皆さんは私たちを憶えていてくれて、以前と変わらずに穏やかで、我われの調査に惜しみない協力を提供してくれました。 それでも、サイクロン・パーシーからの復興は並大抵ではなかったはずです。その過程をきちんと記録することが我われの目的です。もちろん、サイクロンは先史期にも来襲したはずだから、その痕跡を考古学的に確認し、外部からの緊急援助がなかった先史期の復興過程についても情報収集します。
オセアニアの環礁社会は、地球温暖化による気象災害の激化にすでに直面し始めています。文化人類学×ジオアーケオロジーの学際研究の成果を、環礁居住のレジリエンス(回復戦略)に役立てていきたいと考えています。
オセアニアの貿易風帯には環礁(アトール)の島々が数多く点在します。低平な州島(すとう)が首飾りのように連なり、濃紺の外洋からマリンブルーのラグーンを限りとる景色は、楽園オセアニアの典型のように見えます。ところが、州島の大半は海抜3mをこえず、その幅もせいぜい2kmしかありません。完新世中期に海面から顔を出した離水サンゴ礁の上に、砂礫が堆積しただけの不安定な陸地です。
それでも2000年も前にさかのぼる人間居住の痕跡をマジュロ環礁(東ミクロネシア)で発見しました!オセアニアの環礁では最古の遺跡の1つです。できたばかりの砂礫の陸地に人びとは何を加え、どのように暮らしてきたのだろう。発掘調査をしてみると、居住が始まった早い段階から州島の中央部に天水田が掘り込まれ、サトイモ科根茎類(おそらくミズズイキ類)の栽培が始まっていたことが分かりました。地球科学(ジオサイエンス)と連携する考古学、「ジオアーケオロジー」の手法を用いて、現在の州島景観のなかに人と自然の絡み合いの歴史を読み解く研究に取り組んでいます。
出版(分担執筆):『ようこそオセアニア世界へ』(昭和堂)(2023.2.28)
企画展:出会い、さまざまなカタチ(2019.1.17-3.12)
デジタル・ミュージアム:慶應大所蔵メラネシア資料データベース開設(早稲田システム)(2019.4.11)
出版:『アイランドスケープ・ヒストリーズ:島景観が架橋する歴史生態学と歴史人類学』(風響社)(2019.2.28)
シンポ:オセアニア学会記念シンポ・ウミとシマの世界を見る眼−オセアニア研究のこれまで、いま、そして、これから(パネラー)(2018.3.21)
シンポ:毒のバイオグラフィー(コメンテーター)(2017.1.21)
世界考古学会議T06-I:Patterns and Processes in the Transformation of Pacific Island Landscapes (2016.8.29)
日本サンゴ礁学会第18回大会実行委員長 (2015.11.26-29)
シンポ:モノに響く声,モノが導く対話,人類学の想像 (2015.1.17)
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