2019年度も極東証券株式会社寄附講座としての文学部公開講座が開催されることとなりました。共通テーマは「文学部のひらく世界」です。哲学、歴史学、文学を専門分野とする講師陣をお迎えし、文学部のカバーする領域の広がりをみなさんと一緒に考えていきます。
第1回「不死は望ましいか」は、6月29日三田キャンパス北館ホールにて開催されました。松浦良充文学部長の挨拶に続き、文学部哲学専攻卒業生で日本大学文理学部准教授の鈴木生郎氏による講演が行われました。多くの「死」は害悪であるとはいえ、それでは不死は望ましいのかというとそういうわけではない。それでは、どのような点で「不死は望ましくない」と言えるのか。分析哲学がご専門の鈴木氏は、不死を一例に哲学とはどのような学問であるかということをわかりやすく説明くださいました。イギリスの哲学者バーナード・ウィリアムズの主張を批判的に検討しつつ、鈴木氏は不死が望ましくない理由は「何をしてもその後も人生が続く」こと(人生の無限性)によって、人生の価値が著しく下がる点にあると結論づけられました。講演後は講演内容から哲学・倫理学の学問分野全般、慶應義塾大学の魅力に至るまで、聴衆との間で自由闊達な質疑応答がなされ、盛況のうちに公開講座は幕を閉じました。