7月13日,三田キャンパス北館ホールにて,極東証券株式会社寄附講座による文学部公開講座「文学部のひらく世界」の第2回「アジアの歴史と現在」が開催されました。
松浦良充文学部長挨拶の後,勝沼聡文学部准教授(東洋史学専攻)から講演「アジアにおける伝統と近代―中東,特にエジプトを中心に―」がありました。講演では,エジプトにおける近代受容の経緯について,近代日本も視野に入れた詳細な検討がなされ,非西欧世界の近代における伝統の役割や伝統と近代の連続性が明らかにされました。
続いて,杉山隆一 東京大学東洋文化研究所特任研究員から講演「イランにおける近代と宗教制度―宗教寄進が促した近代化―」がありました。講演では,ワクフ制度(イスラーム法で定められた宗教寄進制度)を活用した国民意識・文化形成や社会・経済発展の経緯の検討を通して,伝統への回帰が近代と対立せず,むしろ近代化を促したことが示されました。
100名近い参加者との議論の時間では,「伝統はどうして守られるべきとされるのか」「西欧化だけが近代化なのか」といった大きな問題や,講演者が東洋史学を学ぶことになったきっかけ,歴史研究を行ううえでのスタンスなど幅広い話題が展開し,大変盛況のうちに公開講座終了の時間となりました。