イスラーム法廷台帳には、裁判の記録だけでなく、結婚、改宗、物品の売買や賃貸借、遺産、商品の価格、店舗の分布など、都市やその人々に関するあらゆる情報が記されています。それらの解読と分析をとおして近世イスタンブルの社会を再構築することができないか、日々、試行錯誤を重ねています。
最近の研究では、18世紀後半に生きたイブラヒムという皮なめし職人の遺産に関する記録を分析しました。それによって彼の財産だけでなく、工房の経営、家族・親族関係、同業者との関係なども知ることができました。イスラーム法廷台帳の魅力は、他の史料では知ることが難しい庶民の生活の一端がわかることにあると言えるでしょう。