私が専攻する文化人類学は、私たちの「あたりまえ」が通用しない「他者」や「異文化」を研究対象とする学問です。奇妙な慣習や理解が難しい言動に直面したとき、私たちは自分がもつ「あたりまえ」の視点からその意味を憶測してしまいがちです。それに対して、文化人類学では、人びとの行動や思考を「内側から」理解しようと努めます。そのために必要となる営みがフィールドワークです。調査者自身が人々の生活する現場に身を置き、その場に生きる人びととくらしをともにしながら調査を進めるのが、フィールドワークです。「他者」と長い時間を共有する過程で、最初は奇妙に思えた彼らのふるまいや考えが、段々と了解できるものになってくるのです。