私の専門分野はドイツ語史です。英語のhistoryとstoryとが同じ語源であるように、ドイツ語の《歴史》を人びとの息づかいが聞こえてくるような《ストーリー》として描いてみたいと思っています。歴史上、ドイツ語を母語とした作曲家は数多くいます。彼らの実生活の様子が音楽史研究で丹念に調べられているおかげで、書簡等に書き遺されたドイツ語文がそれぞれどのような状況で書かれたものかが生き生きと、手に取るようにわかります。言語史研究と音楽史研究をリンクさせることで、話し手の心理の機微をうがつようなストーリー性のあるドイツ語史が描けそうに見えてきます。