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研究紹介過去のことばから当時の人びとの言語意識を再構成する独文学専攻佐藤 恵 助教2023/02/03

ドイツ語の(ヒ)ストーリー

私の専門分野はドイツ語史です。英語のhistoryとstoryとが同じ語源であるように、ドイツ語の《歴史》を人びとの息づかいが聞こえてくるような《ストーリー》として描いてみたいと思っています。歴史上、ドイツ語を母語とした作曲家は数多くいます。彼らの実生活の様子が音楽史研究で丹念に調べられているおかげで、書簡等に書き遺されたドイツ語文がそれぞれどのような状況で書かれたものかが生き生きと、手に取るようにわかります。言語史研究と音楽史研究をリンクさせることで、話し手の心理の機微をうがつようなストーリー性のあるドイツ語史が描けそうに見えてきます。

モーツァルトのドイツ語

私はモーツァルトの故郷であるザルツブルク(オーストリア)に留学し、ここで博士論文(ハイデルベルク Carl Winter社より2022年12月刊行)を書きました。ザルツブルクで話されるドイツ語は、今も昔も標準ドイツ語とはかなり異なるのですが、18世紀後半にモーツァルトが家族や知人に書いた書簡を見てみると、彼の放埒なキャラクターイメージにもかかわらず、とても標準的なドイツ語で書かれています。実は、インテリであった父レオポルトの影響が強くあったのです。ちなみに母アンナの書いたドイツ語は、かなり方言性が強いものでした。

ホーエンザルツブルク城を臨む個人研究室にて(ザルツブルク大学)

ベートーヴェンの筆談帳

聴力を失った晩年(19世紀初め)のベートーヴェンは、居を構えたウィーンで家族、友人から家政婦に至るまで、さまざまな人物たちと筆談帳を用いて会話しました。例えば、ドイツ語のwegen「~の故に」という前置詞には(所有格を用いる)標準形と(目的格を用いる)方言形とがあります。ベートーヴェンの甥カール(当時12~20歳)はたいてい方言形を用いるのですが、ベートーヴェンに対してだけはほぼ毎回、標準形を用いています。あたかも、伯父に対して「です・ます」体で話す甥のようです。これは、ベートーヴェンに対する畏敬の念の現れとも取れますが、カールの父親の死後、養父となったベートーヴェンからの過干渉に悩んだカールが19歳の時に自殺未遂を起こした史実を踏まえると、カールとベートーヴェンの間の疎遠感が悲しくも現れているという解釈も成り立ちます。

歴史的段階の言語の実態から当時の人びとの言語意識を再構成するというのは難しい試みではありますが、ことばを観察することによって、伝記等では語られてこなかったような、書き手の人物像、意外な素顔を発掘していきたいと思っています。


※所属・職名等は取材時のものです。

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