私の専門は家族社会学です。家族の研究には、社会学のみならずさまざまな分野からのアプローチがありますが、あえて社会学の特徴を言うなら、「社会調査」に重きを置く点だと思います。社会調査による実証データをもとに家族の歴史や現状を示し、理論構築や政策提言をおこなう学問だといえます。
私がこれまでおこなってきた家族社会学の研究は大まかに3つに整理できます。
一つは、結婚の歴史社会学的研究です。明治時代以降の雑誌や新聞、出版物などさまざまな言説資料を対象として、結婚をめぐる規範や価値観の変化を分析してきました。特に、日本社会に長らく存在した「仲人」に焦点をあて、この観点から近代日本の結婚の変化を検討した研究成果を『仲人の近代——見合い結婚の歴史社会学』(青弓社、2021年)として刊行しています。
二つ目は、多様化する家族・パートナー関係の社会調査です。これまで「標準」とされた家族のかたちが揺らいでいる現代、家族や結婚の実態はどう変化しているのか。私は事実婚当事者へのインタビュー調査を通してこの問題にアプローチし、その成果を『事実婚と夫婦別姓の社会学』(白澤社、2022年)として刊行しました。最近は狭義の事実婚に限らず、性的マイノリティやシェアハウスといった多様なパートナー関係や共同生活に対象をひろげ調査をおこなっています。従来の家族とは異なる共同生活の実態や可能性、その保障のあり方について検討しています。
第三に、上記の調査研究とも関連しますが、家族研究の学説史・理論的研究もおこなってきました。古典的文献を現代的に読み直す作業をおこないつつ、「家族の多様化」といわれる時代の理論的枠組みの構築を試みています。その一環として、現在は特に「家族主義」という概念を軸にして日本の近代化を分析する研究をおこなっています。
以上、私は歴史社会学的な研究をベースとしながら、家族関係や共同生活、ケア関係の新たな可能性を探る研究をおこなっています。