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研究紹介絵画市場と複製作品の研究から探る、
17世紀オランダ絵画の評価の変遷
美学美術史学専攻青野 純子 教授2025/11/19

西洋美術史の中でも、17~18世紀のオランダ美術を専門としています。この時代のオランダ絵画の魅力の一つは、市民中心の社会の成立を背景に、身近な風景や出来事、人物、事物を生き生きと描き出した点にあります。そうした特徴を備えた風景画、風俗画、肖像画、静物画は市民に人気を博し、膨大な数の作品が制作され、盛んに売買されました。長年にわたりこうした絵画の研究を続けていますが、近年特に取り組んでいるのは、17世紀オランダ絵画が18世紀以降にどのように評価され、鑑賞され、収集されたのか、またどのようにして後世の画家の着想源になったのかという、受容のあり方をめぐる研究です。

絵画の市場価格から評価を読み解く

17世紀オランダを代表する画家フェルメールは、今日、国際的にも高い人気を誇り、窓から差し込む光の中で静かに手紙を読む女性など、日常の一瞬を捉えた表現によって人々を魅了しています。ただし、その魅力はいつの時代においても認識されていたわけではありません。たとえば、18世紀前半の絵画市場におけるフェルメール作品の評価を調べてみると、競売でのその落札価格は、当時の人気画家の作品と比べて驚くほど低かったことがわかります。美術研究において「価格」を考察することに違和感を覚える人もいるかもしれませんが、作品購入に支払われた金額は、実はその時点における画家の評価と深く関連しているのです。価格が通常より高く、あるいは低くなった場合、そこには必ず何らかの理由があり、それを探ることで当時の評価の実態に一歩近づくことができると考えています。価格の背後に潜むコレクターや画商たちの意図や野心を明らかにし、彼らの視点から絵画作品を分析していく──その過程には、謎を解きながら過去と対話する知的探究の醍醐味があります。

複製作品からオリジナルの評価に迫る

では、オランダ絵画の評価は、時とともになぜ変化したのでしょうか。当時の人々は、彼らの作品に何を見ていたのでしょうか。200〜300年前の人々による評価や認識を理解するためには、美術館において緻密な作品調査を行うだけでなく、図書館や古文書館に保存されている競売目録、コレクターの財産目録、書簡などの文字資料を手掛かりに考察を進めていきます。さらに近年、新たな手掛かりとして注目しているのが、17世紀オランダ絵画を複製した18世紀の版画や素描です。これら複製版画や複製素描は、芸術作品として優れているだけでなく、写真やSNSのなかった当時の社会において、オリジナルの絵画のイメージとその評判を広く伝える媒体として鑑賞され、熱心に蒐集されていました。ここ数年は、ヨーロッパ各地の美術館において複製素描を調査し、18世紀に誰がどの作品を選び、どのように複製したのかを分析することで、17世紀オランダ絵画に対する当時の評価を浮き彫りにしたいと考えています。そしてこの考察により、当時の文化や社会において絵画が有していた意味と役割を明らかにするとともに、21世紀前半を生きる私たちが17世紀オランダ絵画に何を見出し、その特徴をどのように捉えているのか──そうした私たち自身の評価と認識についても、理解を深めていきたいと考えています。

ヨーロッパの美術館での18世紀オランダ複製素描の調査
18世紀オランダ複製版画:ニコラース・フェルコリェ(ヘリット・ダウの絵画に基づく)《ネズミ捕り》

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