私は自分の研究分野について、「都市空間論」または「都市の技術社会史」と名乗っています。そのときどきの文脈で使い分けをしており、一方で、現代の都市空間の特徴にフォーカスするときには「都市空間論」という看板を出し、他方、都市的環境を支える基盤的な技術について、その成立過程を歴史的に問うときには「都市の技術社会史」と名乗っています。
研究のお手本になっているのは、W.ベンヤミン、G.ジンメル、W.シヴェルブシュといったドイツ系の思想家や社会学者、社会史家の仕事です。彼らはパサージュ(鉄とガラスでできたアーケード)や額縁、列車の座席のクッションなど、一見些末な事象を深掘りするなかで、集合的な知覚や想像力の隠れたパラダイム転換を引き出してくるという、共通した思考のスタイルを示しており、彼らのみごとな手際に魅了されて、同じような仕事がしてみたいと思ったわけです。