概要:
人口高齢化の伸展する日本では、高齢者介護の担い手不足が深刻な問題となっており、それを補完するため
に政府は東南アジアを主とする外国からの介護人材受け入れを強化しつつある。その一方で、彼・彼女らの
母国における高齢者ケアの状況はあまり知られていない。本講演では、これまでに行ってきた研究に基づき
、インドネシア・ジャワにおける高齢者ケアのあり方について紹介する。従来の研究では、ケアという行為
を前提として、親族の中の誰がケアを担うのか、あるいは、ケアする・されるという医療化された関係を通
して、そこに関わる人びとの関係性が分析されてきた。それに対して、本研究はジャワの人びとに非常に重
要視されている「そばに居る」というその場を共有する状況に注目する。高齢者と家族や社会との関係は、
狭義の高齢者ケアに限定されない、広い幅の変化をともなった一連のつながりである。そばに居るという観
点からより広い社会文脈の中で人びとの相互関係を見ることによって、ケアのみを切り取ることなく、一連
のつながりの中で高齢者の生き方を検討する。本講演では、高齢者ケアの文化的差異への理解を深める一つ
の手がかりを提示したい。