社会の構造を調査やデータ分析で解き明かす研究に取り組んでいます。最近関わった大きな調査に、紛争の法社会学に関するものがあります。現代の日本社会では、法律に関わる支援を、どんな人がどんな内容でどんな人や機関に求めているか、全国規模の調査を行って分析しました。

こうした全国調査は今回が初めて。予想外のことがわかる素朴な面白さがありました。たとえば、もめごとや困ったことがうまく解決できない場合、調停や裁判という形に紛争化しますが、日本で紛争にまで至る典型的な問題は、金銭の貸借と遺産相続であることがわかりました。また、外国と比較すると興味深い面も見えてきます。欧米では、法的支援を受けやすいのは社会的地位があり裕福な人たち。これは日本でも同じです。ただ、日本人の場合は、本当にせっぱ詰まった状態にならないと、専門機関や弁護士などに相談しない傾向があります。これは、争いを好まず、ある程度は我慢するという文化の影響があります。もう一つの理由として、専門の相談機関や弁護士の数が少なくて、身近に存在していないことも考えられるでしょう。そもそも外国よりもクレーマーが少ない、という違いもありますが。

今回の調査は、文部科学省の科学研究費補助金を得て行いました。司法改革や裁判員制度の流れの中で実施されたもので、法的支援を受けた人の満足度や、法のへき地が生じている地域格差についても調べています。司法をいかに一般の人々が利用しやすい形にするのか、法的支援のあり方は未来の重要なテーマです。分析した結果は、これからの政策的な提言に活かされます。

実態を伝えるとともに、
なぜそうなったかを追究

社会調査を行っても、曖昧にしか分からないことがたくさんあります。そのためデータをどう整理して分析し、曖昧な部分を説明していくのか、それが研究者の醍醐味です。変化の激しい現代社会の実態を捉えて伝えるとともに、なぜそういう実態が生まれたのかという問いに、今後も迫っていきたいと考えています。

慶應義塾大学の文学部といえば、人文科学系の印象が強いかもしれません。しかし、社会心理学や行動科学、社会学、文化人類学など社会科学系の研究も盛んです。こうした分野に興味のある人が、後に続いてくれることを期待しています。

調査データを使って、
パソコンでモデル分析を行う。