視野を広げたことで見つけた
自分の道

高校生の頃、将来は英語科の教員になりたいという思いがあり、慶應文学部で英米文学専攻に進学することを志望していました。また、たまたま私の年の一般入試の英語の問題文にはSimon HorobinのDoes Spelling Matter?の冒頭部分が使われており、入学試験問題を解きながら「慶應文学部の英米文学専攻で英語史を学びたい」と強く思ったことを記憶しています。

しかし1年生の後半に専攻を選ぶ時、慶應文学部が文学系だけでなく哲学系、史学系、人間関係学系、そして図書館・情報学系という多様な領域で17専攻を擁していることに改めて目を向け、各専攻で学べることや自分の興味・関心・適性を色々と探りました。その時、図書館学から情報検索まで幅広い分野に触れることのできる図書館・情報学専攻に魅力を感じ、高校生の頃まで抱いていた将来像を捨てて図書館・情報学専攻に進学することを決めました。

知識と交友関係を
育てた日々

私の在学時、図書館・情報学専攻は17専攻の中でも授業や課題が大変という風の噂がありましたが、いざ専攻に入ってみるとそんなことはなく、むしろ課題は(ものによっては多少の歯ごたえはありましたが)どれも楽しかったです。たとえば2年次必修の情報メディア基礎Ⅱという授業では、毎回教室で情報探索の基礎理論を学んだ後、実際にOPACや物理本の目録を活用しながら図書館の中を歩き回って指定された蔵書を探す課題がありました。

それは一筋縄ではいかず、なかなか大変な回もあったのですが、宝探しのようでもありました。情報メディア基礎Ⅱに限らず図書館・情報学専攻の授業はこのように机上の学びに終始せず実際に手を(時には足も)動かすことを求められる実践的な課題が多く、楽しかったです。

また、そのような課題への取り組みを通して同期と共に試行錯誤し意見を出し合い、励まし合う中で、卒業後の今に至るまで続く友人関係を築くことができました。三田メディアセンターの地下2階を彷徨ったことも、PCルームで慣れないプログラミングに奮闘したことも、今ではとても大切な思い出です。

慶應文学部での多彩な学びは
人生の礎

大学生活の中で学ぶことの楽しさを知ったこと、またゼミで専門にした情報処理系の分野に魅力を感じたことから、卒業後は両者を満たせそうなITコンサルタントになりました。実際、会社では新しい製品や技術について継続的に学ぶことを求められており、慶應文学部で培った学びの習慣が活きていると日々感じています。また、仕様調査やエラー解析のために技術文書を探す時や開発・テストを行う時などに図書館・情報学専攻の授業やゼミで得た知識が直接的に役に立つ瞬間があり、その時は当時の先生方をありがたく思うのと同時に、学生時代を懐かしく思います。

社会人になって学生生活を振り返ると、2年次に専攻を選択するというカリキュラムの恩恵を受けて図書館・情報学と予期せぬ運命の出会いを果たし、それを追求し、その傍らで自分の知的好奇心の赴くままに図書館・情報学に限らない様々な領域に軽やかに足を伸ばして学ぶことができた日々は、毎日が新鮮で、楽しかったです。図書館・情報学専攻での学びが現在のキャリアに繋がっているだけでなく、総合教育科目や専門教育科目として履修した数学や天文学、英語史、心理学などさまざまな領域の知識が私の血肉として人間的な奥行きの構成要素になっており、慶應文学部は私の人生に大きな影響を与えた場所であると思います。そのようにして慶應文学部で造られた土台の上に、今や将来の学びを乗せていき、知的・精神的に彩り豊かな人間になっていきたいです。