外国語としてのフランス語学習には、広く学術的・実践的な目的があります。フランス語を習得することによって、卒業論文の作成を見据えた広範な資料渉猟が可能になるだけでなく、在学中の国際交流や卒業後の社会活動において世界の様々な国の人々と意思疎通を図れるようになることが期待されます。このような特別な語学的汎用性はフランス語の歴史と深い関係があるでしょう。
17世紀に絶対王政を確立したフランス王権は、同時に国語としてのフランス語の文法と語彙の整備を進めました。これにより論理性と明晰さを獲得したフランス語は、宮廷に伺候する人々の間で社交的・文学的な言語として洗練されていきます。そして、ヨーロッパ大陸でいち早く中央集権化を成し遂げたフランスがその中で国家的な存在感を増すにつれ、18世紀になる頃にはフランス語はラテン語に代わって外交や学問における新たな国際的共通語として認識されるに至りました。今日でも国際連合をはじめ、国際オリンピック委員会(IOC)、国際サッカー協会(FIFA)など、フランス語を公用語のひとつとする国際機関は数多く挙げられます。
さらに19世紀以降、首都パリが芸術家たちを惹きつけてヨーロッパの文化的中心地の役割を果たすようになると、様々な芸術の美学や原理がフランス語で表明されるようになります。2つの大戦を経験した20世紀に、フランスでは文学や思想のみならず、建築や音楽、美術、舞台芸術、そして映画や写真などの分野において次々と新しい潮流が生み出されました。今日の私たちの価値観や感性をいまだに規定するこうした文化的革新がしばしばフランス語によって呈示されたため、そのより深い理解のために語学的な知識が不可欠になっています。近現代の西欧文化に関心があり卒業論文で研究する可能性があるならば、フランス語の習得は心強い支えになります。
とはいえ、フランス語を学ぶ意義は文化や芸術への接近に限られるものではありません。20世紀の間に共通語としての地位を英語に譲ることになるものの、現在フランス語はフランス本国や、スイス、ベルギー、ルクセンブルクなどのヨーロッパ大陸内のフランス語圏だけでなく、カナダのケベック州やアフリカ諸国などかつての植民地であった地域を中心に世界的に広く話されています。そして、現時点で世界5位とされるフランス語の話者数は、フランス以外の地域の人口増大と就学率の上昇に伴って今後ますます増えることが予想されています。フランス語が話されている世界の諸地域はフランコフォニーと呼ばれ、緩やかな言語的共同体を形成しています。フランス語学習はまさにこの言語を媒介とする国際的な共同体への参加の第一歩となります。
フランス語は過去と現在、規範と逸脱、中心と周縁の間の緊張の中でいまだ絶えず作り変えられている生きた言葉です。外国語としてフランス語を学べば、否応なくこのような緊張関係のうねりに身を投じることになります。学習者は自分とフランスとの関係や、自分にとってフランス語を学ぶことの意義について考えざるを得なくなるでしょう。しかしながら、習得が進むにつれ、これまでフランス語を通じて連綿と蓄積されてきた膨大な知的・文化的遺産へのアクセスが可能になっていきます。そして、現代を形作るこうした過去の歴史をよく知ることによって今の私たちのあり方への理解を深め、ひいては未来の国際社会の一員として世界に向けて自分を発信していくことを手助けしてくれるはずです。
1年次は「フランス語I」(春学期)と「フランス語II」(秋学期)を履修します。週に、(A)コマ、(B)コマ、(C)コマの合計3コマの授業があります。 (A)コマ、(B)コマの授業は日本人教員が、(C)コマはフランス語を母語とする教員が担当します。
履修者のレベルによって「フランス語初級」、「フランス語中級」、「フランス語上級」のクラスが用意されています。
2年次は「フランス語III」(春学期)と「フランス語IV」(秋学期)を履修します。週に(A)コマと(B)コマの合計2コマの授業があります。1年次に初級、中級のクラスを履修した学生は標準クラスを、1年次に上級クラスを履修した学生は上級クラスを履修します。
慶應文学部のフランス語教育は、学生諸君にとって大変恵まれた学習プログラムを提供していると言ってよいでしょう。例えば、1年次では、週3回のうち1コマは必ずネイティブ教員が担当しますし、1年以内に初級文法のすべての知識を習得することができます。2年次の必修フランス語では、各自の目的に合わせて、各種検定試験の対策や読解、会話の実践など、さまざまな選択肢が用意されています。旅行先で簡単な会話がしたい、フランスの作家や思想家の著作を原文で読めるようになりたい、映画のセリフを聞き取れるようになりたい、英語以外の外国語検定試験にも挑戦したい、などなど、目的は何でも構いません。充実した学習環境をフルに活用し、フランス語を学んだからこそ発見できたという世界を何かひとつ作ってみませんか?
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また、古くから続いているNHKのラジオやテレビのフランス語の語学講座もお勧めです。ほかにもウェブ上には次のようなサイトがあります。どちらも日本語でもフランス語でも利用でき、専用のアプリが用意されています。学習の進み具合に応じて利用するのも面白いかもしれません。