理系の学生たちが様々な技術を学ぶように、文系の学生たちは複数の外国語を積極的に学び、それらを駆使して国内外の人々と意見交換を行うことに文系学問の醍醐味があります。世界とは――私たちが想像する以上に――広くて多様であり、外国語を通じて多様な価値観を持った人々と交流することは、それ自体が有意義であるだけでなく、自分自身の発想や考え方を豊かにする機会となります。
文学部でドイツ語を学ぶ理由にはいくつもありますが、ここでは二つ挙げてみます。一つは、文学部の専門分野(哲学、倫理学、美術・音楽などの芸術論、社会学、歴史学、文学・言語学、人間論、心理学 etc.)の知識を深める際にドイツ語は大変有効です。ドイツ語は多くの学問・学術のふるさとです。上に挙げたもののうち例えば、心理学ではフロイトが、社会学ではマックス・ウェーバーが、哲学ではニーチェが、歴史学ではブルクハルトが、美学美術史ではアビ・ヴァールブルクがこの言葉で思索しています。このようにドイツ語を学べば、専門課程での勉強の可能性を大きく広げることができます。これらの分野において書かれたドイツ語の著作や論文を読むことで、今、世界で議論されている重要な事柄に関する見地を的確に得ることができます。
二つ目は、英語以外の外国語を学ぶことの重要性と必要性を考えたときに、ドイツ語は魅力的な言語であることです。世界を広く見渡すと、特にヨーロッパでは、若い人たちが英語だけでなく複数の外国語を使いこなして意見交換する光景を見ることは珍しくありません。彼らはこのような機会を通じて(職業人生を含む)自分の将来を切り開こうとしています。その際ドイツ語は重視されており、ドイツ語を通じて国際交流を広げるチャンスを得られます。
ドイツ語を学ぶことはみなさん自身の可能性を──日本で一般的に想像されている以上に──広げることにつながります。
外国語学習一般に言えることですが、ドイツ語を初めて学ぶ際、まず基礎的な文法を学ぶ必要があります。これと並行してドイツ語を話す、聞く、書くことにも慣れることも重要です。文学部ではこの二つを視野に置いてドイツ語教育プログラムを用意しています。
一年次は週三回のドイツ語授業を受けます。このうち二回は、日本語で文法の基礎やドイツ語圏の文化を学びます。また週一回のネイティブ教員による授業では、習得した文法を使ってドイツ語を実際に話したり、聞いたりする練習をおこないます。その際には、細かい文法はとりあえず脇に置いて、ついこの間までまったく知らなかった言語で意思疎通ができる面白さを実感できるでしょう。
一年時に週三回ドイツ語をしっかりと学ぶと思いのほか上達します。文法は一通り習得できるし、辞書を使えばかなりの文章を読むことができます。一年間ドイツ語を勉強することにより、ヨーロッパ共通参照枠の A2 レベル、ドイツ語検定試験(独検)であれば3級程度のドイツ語力が身に付きます。さらに集中的に学習することによって同 B1 レベルの知識の習得(独検ではほぼ2級に相当)も可能です。
二年生は、専攻によって履修の要件が異なりますが、授業ごとにテーマ(時事、社会、文学、芸術など)を設けた授業で、一年次に得たドイツ語力を伸ばすことを目指します。
ドイツ語のどのスキルをどれだけ身につけるかは、学生個人の関心や目的によって変わってきます。そのため、ドイツ語 III、IV では授業毎のシラバスが詳しく記載されますので、 シラバスをよく読んでどの授業がどのようなテーマでドイツ語の学習できるかについて確認して授業を選んでください。各授業は総じて、 ドイツ語圏の文学や社会、文化などをテーマにドイツ語の知識をさらに深めていくことを目標としています。2年では B1 レベルを目標にするとよいでしょう。B1 レベルに達したら留学までもう一歩です。
ベルリン自由大学、ボン大学、ドレースデン工科大学、ザールブリュッケン大学、デュッセルドルフ大学、ジーゲン大学、ライプツィヒ大学、アーヘン工科大学などとの交換協定による留学生派遣を行っています。オーストリアやスイスの大学へ留学する学生もいます。
ドイツ語ができるようになると、英語をはじめとする印欧語への理解と興味も深まります。ドイツ語学習を通して、豊かなヨーロッパ文化に手を伸ばしてみませんか。
女性作家として戦後ドイツ文学を代表するインゲボルク・バッハマンは「新しい言葉がなければ、新しい世界もない」と書いています。ドイツ語を学ぶことで、新しい世界へと足を踏み入れてください!
古代ゲルマン語の相貌を色濃く残すドイツ語は、(日本語と同様)太古と現代をつなぐことのできる言葉です。じっくり浸っていると、色々なことが見えてきます。
ドイツ語がわかると、ベートーヴェンが書いた手紙や、モーツァルトの『魔笛』が原語で理解でき、音楽の世界がぐっと広がります。ドイツ語が母語の音楽家は多いのです。
ドイツ語を学ぶことによっても、他の地球上のあらゆる言語と同様、その言葉の奥にある叡智に触れることができます。これは非常に楽しい営みです。
ドイツ語は学術言語としても非常に有能です。美術でも歴史でも哲学でも、人文学を深く学びたい人はぜひこのオプションを身につけてください!
文学部生が自身の関心領域を充実させようと思うとき、ドイツ語での情報やアイデアはとても参考になるでしょう。英語以外の外国語履修で選択に迷うとしたら、ひとまずドイツ語を選んでみてください。きっとそれが何らかの形で益することになるでしょう。
Jede Kultur ist eine eigene Welt. Wenn Sie Deutsch lernen, lernen Sie also eine neue Welt kennen.
(それぞれの文化にはそれぞれ固有の世界があります。ドイツ語を勉強すれば新しい世界に出会うことができます。)
Deutsch zu lernen ist schon deshalb empfehlenswert, weil Deutschland nach der Schweiz das beliebteste Land der Welt ist. Deutsch lernen macht aber auch deshalb Spaß, weil die Deutschen immer staunen, wenn eine Japanerin oder ein Japaner ihre Sprache sprechen. “Staunen”? Nein, sie versinken vor Respekt im Erdboden, weil sie wissen: Englisch kann jeder ein bisschen, Deutsch nur die Besten.
(ドイツ語を学ぶことはドイツがスイスについで世界で二番目に人気のある国であるということだけでもおすすめですがそれだけではありません。日本人がドイツ語を話すのを見ると、ドイツ人は驚きます。いや、驚くというよりは、畏敬の念を持ち、自らを恥じるあまり穴があったら入りたくなるのです。なぜかって?ドイツ人は、英語は誰でも少しはできるけれど、ドイツ語はもっとも賢い人だけができるっていうことを知っているからです。)